今宵のハロウィン・パーティを盛り上げる”魔法のケーキ”
世界の街角は、オレンジ色のかぼちゃのお化け、魔女、クモの巣などハロウィーンの飾りつけ一色だ。
11月1日はキリスト教の祝日の万聖節。すべての聖人を祝う日であり、同時に死者たちを弔う日でもある。この前夜にあたる今日10月31日に開かれるのがハロウィン・パーティで、そもそもこの習慣は英米ではじまったもので、フランスなどにはないものだったそうだ。
しかし、今ではコマーシャリズムにのって、ヨーロッパの各街でも、そして日本の街でも、若者たちは仮想をしてパーティに繰り出し、また、子どものいる家庭でもハロウィン・メニューが食卓を彩っているのだ。
菊の花に包まれる美しきパリの墓地
私たちがパリで最初の数年間を暮らしたアパートは墓地前だった。
窓から見える風景は墓地だけなので、はじめは怖くてしかたがなかった。曇天の日、雨の日はなんとなく不気味でゾクゾクしたし、また告別式の葬列を見た日などもなんとなく気分が落ち込んだ。が、そんな風に墓地を怖がる日本人の私の感覚をフランス人たちには理解できなかったようだ。
「どうして日本人は墓地が怖いのか? フランスじゃ、静かで、このあと建物が立つ心配はないし、ロケーションとしちゃ最高なんだよ」と何人ものフランス人から言われたものだ。
ところが、ハロウィンの季節を迎えたとき、私の気持ちは一転した。目の前の墓地は黄色の菊の花で埋め尽くされ、まるで黄色の絨毯を敷き詰めたような見事な風景に一変したのだ。
11月1日はフランスでは、日本のお彼岸さながらに、先祖の供養のためにみんながお墓参りに出掛ける。花は切り花ではなく、こんもりとした菊の鉢植えを墓石の上に数個も飾るので、墓地全体が菊の花に包まれるのだ。花屋の店先には黄色、白、ピンクの鉢植えが並んでいるが、わが家の窓から見えた墓地は、まるで示し合わせたように黄色一色で本当に感動する美しさだった。
日ごろから、パリの墓地は散歩コースとして市民から親しまれ、また観光スポットにもなっている。有名人が多く眠るモンマルトル墓地、モンパルナス墓地、ペールラシェーズ墓地も、今は菊の花に包まれ一年でいちばん華やかな顔を見せているのだ。
今夜、食べたい魔法の新食感ケーキ
さて、ハロウィン・パーティのお菓子はどうしよう? と、たった今お考えの方におすすめしたいのが“魔法の焼き菓子”だ。
『ガトーマジック 〜フランスで生まれた、魔法の新食感ケーキ〜』(飯田順子・著/学研プラス・刊)は、フランスの料理サイトやレシピ本で大人気になった不思議なケーキの作り方を、日本の私たちに伝授してくれる一冊。家庭のキッチンにいつもある材料を混ぜて焼くだけなのに“ふんわり”、“とろとろ”、“もっちり”と食感の違う3層のケーキに仕上がるというもの。
卵が主役の素朴な生地で、焼き加減によってシフォン、スフレ、プリン、エッグタルト……。いろんな焼き菓子にたとえられる食感がひとつのケーキの中に“魔法”のように生まれます。
このガトーマジックは、フランス菓子の原点ともいえるミアス(Millas)という、粉、卵、牛乳、バターを練って作る古典的な家庭の焼き菓子がベースにあります。(中略)ガトーマジックは、フランス人にとって新しくて懐かしいママンの味ともいえるでしょう。
(『ガトーマジック 〜フランスで生まれた、魔法の新食感ケーキ〜』から引用)
メレンゲと卵黄生地をふんわり混ぜて焼く
ガトーマジックを上手に焼き上げるにはメレンゲと卵黄生地の混ぜ方がカギとなるそうだ。
表面の“ふんわりスポンジ層”はメレンゲの泡によって生まれ、卵黄生地は下で固まるのでこれが“もっちりフラン層”に。そして中心部は火の通りが遅いため”とろとろカスタードクリーム層”に仕上がるのだ。
基本材料は、卵、牛乳、薄力粉、バター、砂糖。たったこれだけなので、思い立ったら気軽に作れるのもガトーマジックの魅力。
また、プリンのように湯せん焼きをする必要はなく、この本では簡単で作りやすい直焼きのアイディアを提案している。天板と焼き型の間にバットを1枚はさむだけで加熱のムラを防げるので初心者でも失敗なく焼き上げられるというから嬉しい。
基本のガトーマジックをマスターしてしまえば、あとは型を変えたり、いろいろな具材を加えて、さまざまなアレンジも楽しめる。
本書では、ベーシックなガトーマジックのレシピ、そしてアレンジレシピも数多く紹介されている。
ハロウィーンのかぼちゃケーキのレシピももちろんある! 今夜のパーティで家族やスイーツ好きの友人たちと“魔法の味”を作って、楽しんでみてはいかがだろう。ハロウィン・パーティが盛り上げること間違いなし!